宝石物語 日常のストーリー


神社での祈願

 

男と女は神社の鳥居を過ぎて砂利が敷いてある参道をゆっくりと歩いていて、男は太陽が反射しているのではないかと思うような真っ白い洗いざらしのシャツとベージュのチノパンで、女は同じく白いワンピースを身にまとっています。

 

宝石物語

男は、最近ちょっときつくなってきたブレスレットが汗ばんできたので手首を振っています。

 

そして、ゆっくり周りを見回すと、そこは住宅街の一角にある神社なので、平日の午前は他にひとの気配はなく閑散としていて、ふたりの踏みしめる砂利だけが参道に響いています。

 

やがて、目の前に30段以上ある階段が近づいてきて、ふたりがゆっくりと上がっていくと木々に囲まれた小さいながらも趣のある社がゆっくりと現れてきました。

 

長い階段を上がりきると、社まで行く道の両脇には木々が並んでいて太陽の光が葉っぱに反射してキラキラして見えます。

 

その中をふたりは会話を交わすこともなく、砂利の音だけを響き渡らせながら思い思いの願い事を携えながら進んでいきました。

 

社の前まで行くと、男が出て社の前の数段の階段を上がっていき、お金を賽銭箱に投げ込むとコンッ、コトコト、コトっと音がして、それが周りに聞こえるかのような静寂がふたりを包みます。

 

男は頭を2度下げて礼をして、そして、2度手を叩いて最後に礼をもう1度してから自分の願いを心を込めて祈ります。

 

男が祈りを終えて数段の階段を降り、今度は女が階段を上がろうとしたその時に、右足のつま先が段の途中に当たってバランスを崩して、そのまま体の重みでスネを階段の角に思いっきり打ちつけることになってしまい、女は呻きながらその場でうずくまってしまいました。

 

そして、男は、

 

”おお、こんなに早く願い事が叶うとは驚いた”

 

と、思ったのでした。

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