カリナン 史上最大のダイヤモンド原石
カリナンの系譜
1905年1月、南アフリカのプレミア鉱山で、宝石の歴史を通じて最も大きくて壮麗なダイヤモンド原石”カリナン”が発見され、このダイヤモンドは、トーマス・カリナンに因んで命名されました。
その、トーマス・カリナンの祖父ジェームズ・カリナンはアイルランド出身で、本来は1836年に、妻を伴って海を渡ってイギリスに行き、そこからニューヨーク行きの移民船のどれかに乗るつもりでしたが、移民船に乗る前のイギリスで羽目を外しすぎたために、当初の計画は挫折してしまったのです。
結局、支度金を使い果たしてしまい無一文同様になって、移民船には乗ることができずにイギリスに足止めされてしまいますが、その窮地をジェームス・カリナンは英国陸軍に入隊することによって、何とか脱することができました。
そして間もなく、彼の連隊は、南アフリカに派遣され、ケープ植民地の国境に駐屯すことになり、そこで定住の地を求めたのです。
その一族の名前を世界的なものにすることになったジェームズ・カリナンの孫のトーマス・カリナンは、南アフリカで建築業者として成功していたのですが、彼の関心は探鉱であって、いつかダイヤモンド鉱山を発見したいという思いでした。
プレミア鉱山
カリナンは、南アフリカのプレトリア地方の外側にある農場からのダイヤモンド産出量が増えつつあることに特別な関心があり、そこでは、先に、セシル・ローズとも親しかったパーシパル・ホワイト・トレーシーが探鉱を始め、ダイヤモンド鉱脈の兆候にいきあたっていたのです。
そして、カリナンはトレーシーと手を組むことになり、資金作りのためにプレミア・ダイヤモンド鉱山株式会社を設立して、トーマス・カリナンは会長に指名されることになり、やがてプレミア鉱山の歴史上というより、ダイヤモンド鉱山史上、最も劇的なことが起こります。
史上最大の発見
それは、1905年1月26日の午後遅くのことで、皆が仕事を終らせかけていたときに、ひとりの探鉱夫が興奮して監督官であるウエルズのところに駆け込んで来て、その探鉱夫は、ウエルズを伴って露天掘りの側壁の断面に行き、夕日を反射して輝く光を指差しました。
それは、深さ9メートルある断面の高いところの壁面の上から這い降りることができる程度の距離にあったので、ウエルズは、苦労しながら降りて行き、ポケットナイフを使って、途方もなく巨大なダイヤモンド原石を掘り出して、その時、ウエルズは「こりゃ驚いた、これを見たらカリナンさんが喜ぶぞ!」と言ったといいます。
ところが、事務所に着いたウエルズは、その大きなダイヤモンド原石をスタッフ達に見せたところ、ひとりが「これがダイヤモンドなもんか」と叫んだのです。
結局、重さだけ計っておこうということで計測すると3106カラットもありました。
その晩、カリナンは夕食で、友人をもてなしていて、その席に発見の一方が届けられましたが、カリナンは驚かずに、テーブルにいる人々に伝えながら、「間違いだと思う、恐らく大きな水晶だろう。」と、ポツンと言ったといいます。
大型ダイヤモンド
カリナン・ダイヤモンドは別として、この頃の数年においてプレミア鉱山では100カラット以上のダイヤモンドが少なくとも22個発見されています。
内訳は、4個は300カラット以上、2個は200カラット以上で、16個は100カラット以上あるもので、このような大型が引き続き採掘されれば、大型のダイヤモンド自体の価格は大幅に下がるだろうと懸念していた時期でもあったのです。
9個のダイヤモンドにカッティング
結果的に、カリナン原石は9個に分けてカッティングされることになって、その研磨は、ジョセフ・アッシャーやアンリ・コーら当時の最高峰の優れた職人たちに託されることになり、研磨職人3人で一日14時間働き続けても8ヶ月もの期間が必要でした。
カリナン原石からカット研磨された9個のダイヤモンドの合計重量は1055.90カラットで、これは、カットによる重量ロスは62.25%になることを示しています。
@カリナンT 530.20カラット ペアシェイプカット
AカリナンU 317.40カラット クッションカット
BカリナンV 94.40カラット ペアシェイプカット
CカリナンW 63.60カラット クッションカット
DカリナンX 18.80カラット ハートシェイプカット
EカリナンY 11.50カラット マーキースカット
FカリナンZ 8.80カラット マーキースカット
Gカリナン[ 6.80カラット 楕円形のブリリアンカット
Hカリナン\ 4.40カラット ペアシェイプカット
〔カリナンT〕
サイズは58.9mm×45.4mm幅の壮大なもので、世界最大の研磨済みダイヤモンドで、イギリス国王であるエドワード7世に贈られ、国王はこれを”グレート・スター・オブ・アフリカ”と命名しています。
〔カリナンU〕
サイズ44.9mm×40.4mm幅で64面のファセットを持っていて、現存する世界で2番目に大きい研磨済みダイヤモンドで、これもイギリス国王に贈呈されることになり、そのほかのカリナン7個全ては仕事の報酬として、アッシャー社が保有することになったのです。