宝石物語 日常のストーリー


今日のあなたはとっても優しいのね

 

男はひとりで公園のベンチに座っています。

 

そこは、昼下がりの日差しが降り注ぐ都会のオアシスのようなとても広い敷地の公園で、男は少し眠気を覚えながら遠くを見つめています。

 

その少し離れたところでは、カップルが寄り添って何か秘密の話をしているようで、その横では子供たちがボールを蹴って笑いながら遊んでいます。

 

と、男の横に置いてある携帯電話の呼び出し音が鳴りました。

 

宝石物語

「ねぇ、あなた、お願いがあるの、今買い物に来ているんだけど、とっても素敵なダイヤのネックレスなの、ちょっと高めで25万円いかないくらいなんだけど買っていいかしら」

 

「いいよ」

 

「それと、そのネックレスとお揃いのピアスが19万円で買えるの、セットだとすごく素敵になるのよ、これもいいかしらー?」

 

「うん、いいよ」

 

宝石物語

「ありがとう、それに今日までの特別セールなんだけど、すごくゴージャスで絶対お買い得っていう指輪が半額になっていて29万円で買えるっていうのもあるのよ」

 

「分かったよ」

 

「嬉しいわー、今日のあなたはとっても優しいのね、じゃ、後でね」

 

と、男は携帯電話を横に置くと、伏し目がちに思案します。

 

この携帯電話を拾得物として警察に届けようか、それともこのまま立ち去ろうかと。

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