宝石物語 日常のストーリー


お隣のキス

 

沙織はいつものように、玄関を出てゴミを出そうとしていると、お隣のご夫婦が、ご主人が出かける前に玄関でキスをしているのが目に入ります。

 

沙織は、気にせずに歩きながらゴミ置き場へ歩いていると、今度は、3、4軒先のお宅でもご主人が出かけるときに奥さんとキスをしているのを見たのです。

 

宝石物語

その奥さんは普段からゴージャスな宝石を身に着けているので、近所でおしゃれで評判になっていて、今日も、遠くからでもはっきりと分かる大きな真珠の指輪です。

 

沙織は家に戻ってから、洗濯や掃除を終えてテレビをつけました。

 

しばらくテレビを見ていると、今度はドラマの場面でキスをしていたので今朝のことをまた思い出します。

 

それから、夕方になって買い物を済ませてから夕飯の支度を終えてご主人の帰りを待っていると、ピンポーンっとチャイムが鳴り、

 

「おかえりー」

 

「ただいまー」

 

「お疲れ様でした、今日も一日順調だった?」

 

「そうだね、順調というよりは特に何事もない一日だったかな」

 

「ねえ、今日はキスをしているひとをたくさん見たの」

 

「キス?」

 

「ええ、お隣とか、すぐ先のご夫婦もご主人が出掛けるときに玄関で奥さんにキスしていたの」

 

「へえー、そうなんだ」

 

「たぶん、お隣は毎日ご主人が出かけるときに奥さんにキスしてるんだと思うわぁ、あなたも同じことをしてほしい」

 

「おい無茶言うなよ、俺は隣の奥さんとは話したこともないし、第一、そんなことをしたらお隣のご主人はどう思うんだ?」

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